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睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群は3種類あり、口や鼻から声帯(肺の入り口)までの空気の通り道が狭くなって起こる閉塞型、脳の呼吸を調節する機能が低下して起こる中枢型、その両方に関係する混合型に分類されます。最も多いのが閉塞型です。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の原因のひとつは肥満といわれています。睡眠中、喉は緊張がゆるみ、普通体型の人であっても空気の通り道が狭くなりますが、呼吸が止まるほどではありません。しかし、肥満の方では、のどに脂肪が蓄積されるために空気の通り道が狭くなります。


睡眠時無呼吸症候群になりやすい人

睡眠時無呼吸症候群になりやすいのは、必ずしも肥満である方に限りません。肥満でなくても、アゴの骨格(下顎骨が小さいなど)やのどの奥の形(扁桃腺や口蓋垂が大きいなど)によって、空気の通りが悪くなりやすく、無呼吸の原因となります。
さらに、飲酒や睡眠剤の摂取は、のどの緊張をゆるめてしまう効果があるため、無呼吸の発生を促す可能性があります。
以前は狭心症が進行すると心筋梗塞になると考えられていましたが、現在では必ずしもそうではなく、狭心症でない方が突然心筋梗塞になる例も多いことがわかっています。


睡眠時無呼吸症候群の症状

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に呼吸の休止を繰り返したり、呼吸が浅くなったりすることで、体内が低酸素状態になる疾患をいいます。

この疾患には、以下の症状が見られます。

  • 周囲からいびきを指摘される
  • 夜間睡眠中に、目が覚めることが多い(息苦しさで目が覚めることもある)
  • 起床時に頭痛や倦怠感がある
  • 日中の眠気

睡眠時無呼吸症候群の種類

閉塞性の睡眠時無呼吸症候群

肥満、扁桃肥大、アデノイド肥大、顎の構造、舌の気道への落ち込み、鼻炎、鼻中隔湾曲症などが、睡眠中に気道を塞ぐことがあり、これが無呼吸を引き起こす要因となります。睡眠時無呼吸症候群のほとんどは閉塞性であるとされています。

中枢性の睡眠時無呼吸症候群

呼吸機能を司る脳の呼吸中枢の障害により、睡眠中に無呼吸が起こります。正常な呼吸ができなくなるという症状であり、閉塞性睡眠時無呼吸症候群のように、苦しそうないびきは出ません。心不全、脳卒中、腎不全を伴うことが多いとわかっています。


睡眠時無呼吸症候群の合併症

虚血性疾患(狭心症・心筋梗塞)

冠動脈の狭窄や閉塞による虚血性心疾患と、睡眠時無呼吸症候群には深い因果関係があります。狭心症や心筋梗塞を患っていると睡眠時無呼吸症候群を合併しやすくなり、睡眠時無呼吸症候群を患っていると虚血性疾患を合併しやすいことがわかっています。

心不全

あらゆる原因によって心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなった状態が心不全です。心疾患の多くが、進行すると最後には心不全になります。心不全は、他の疾患やストレスが原因で起こることもあります。近年増加している睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に無呼吸を繰り返すことで心機能が低下しやすい状態です。睡眠時無呼吸症候群に心不全を合併すると、死亡リスクが高まることが研究で示されています。逆に睡眠時無呼吸の治療を行うことで夜間の低酸素状態から解放され、心不全が改善する方もいます。

心不全

脳血管障害

脳梗塞や脳出血などの脳血管障害を発症した方を対象とした追跡調査において、重度の睡眠時無呼吸症候群のある場合、脳血管障害の発症リスクが約3倍にまで上がることがわかっています。

糖尿病

睡眠時無呼吸症候群の重症度に比例して、糖尿病を合併する例が増加することが指摘されています。

糖尿病

高血圧

睡眠時無呼吸症候群があると高血圧の発症リスクが高まることが海外の研究で報告され、日本でも同様の研究結果が指摘されています。また、睡眠時無呼吸症候群では夜間の血圧が非常に高くなり、一般的な高血圧治療薬が効きにくくなる例があることもわかっています。多く血圧の下げるお薬でも下がらないといった場合に、無呼吸の治療であるCPAP(持続陽圧換気呼吸療法)を使用すると血圧が下がってくる方もいらっしゃいます。

高血圧

不整脈

睡眠時無呼吸症候群では、呼吸が一度止まったり、再開したりすることが繰り返されるため、自律神経のバランスが崩れ、不整脈が起こります。特に問題のない生理的な不整脈も多いのですが、中には迅速かつ適切な治療が必要な不整脈もあります。また、治療によって睡眠時無呼吸症候群の症状を取り除くことで、不整脈が改善することもあります。

不整脈


睡眠時無呼吸症候群の検査

Epworth Sleepiness Scale(ESS エプワース眠気尺度)

エプワース眠気尺度(ESS)とは、眠気を評価するためのチェックリストの事です。
この尺度は、特定の状況で感じた眠気の数に基づいており、8つの質問に答えることで眠気の度合いを評価します。

簡易検査

従来は入院が必要であった睡眠中の呼吸や血中酸素飽和度を測定・記録する検査が、ご自宅で簡単にできるようになりました。簡易的な検査ですが、普段の睡眠状態を調べることが可能です。検査をご希望の方は、当院から検査会社にお申し込みいただくことで、専用の検査機器がご自宅まで届きます。説明書に従い、センサーを手と顔に装着して眠るだけで測定・記録されます。装置が返却されると、データが分析され、1時間あたりの無呼吸と低呼吸の平均回数が割り出されます。この平均回数は無呼吸低呼吸指数(AHI)として表されます。40以上であれば保険適応となります。

ポリソムノグラフィー検査(PSG)

睡眠中の呼吸や血中酸素飽和度、脳波、眼球運動、呼吸運動、心電図、いびき、口や鼻からの空気の流れ、睡眠中の姿勢などを測定し、記録する精密検査です。必要に応じて連携医療機関をご紹介し、1泊入院していただく必要があります。簡易検査でAHIが20-39の場合におすすめされる検査です。


睡眠時無呼吸症候群の治療

CPAP療法

プラスの圧力をかけた空気を送り込んで気道を確保し、無呼吸や低呼吸の発生を防ぐ治療法です。ご自宅に専用の装置を設置し、そこからつないだマスクを着用して睡眠します。多くの症例で効果が高いため、現在では睡眠時無呼吸症候群の主な治療法となっています。ただし、根治的な治療法ではなく、マスクの装着をやめると再び無呼吸や低呼吸が起こります。

マウスピース

マウスピースは、顎の位置の問題による睡眠中の気道閉塞の症状が軽い場合など、限られた症例に有効です。下あごを上あごより前方に固定するマウスピースを装着して睡眠します。

外科手術

扁桃腺やアデノイドの肥大が原因となって、睡眠時無呼吸症候群や低呼吸症候群が起こっている場合に検討されます。ただし、軟口蓋の一部を切除する治療によっては十分な効果が得られなかったり、傷跡が残って再発したりする可能性があるため、慎重に検討する必要があります。手術施設のある耳鼻咽喉科に紹介をいたします。

その他の治療(生活習慣の改善)

肥満の場合、横になると周囲の脂肪が気道側に落ちて無呼吸になりやすいので、減量して適切な体重を維持することが大切です。就寝時に仰向けではなく横向きで寝ると症状が緩和されることがあります。また、アルコールは筋肉を弛緩させる作用があるため、就寝前の飲酒は気道周囲の筋肉を緩めて落ち込み、気道が閉塞しやすくなります。就寝前の飲酒は避けましょう。