脂質異常症(高脂血症)とは
血液中の脂質には、悪玉のLDLコレステロール、善玉のHDLコレステロール、中性脂肪(トリグリセリド)があります。脂質異常症(高脂血症)とは、これら3つの成分のバランスが崩れたままの状態が継続することをいいます。脂質異常症は動脈硬化を進行させ、血栓やプラークによって血管が狭くなったり閉塞したりする疾患です。自覚症状がないまま進行し、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞を発症するといった危険性もあります。健康診断などで脂質異常を指摘されたら、早めに受診し、適切な治療を開始してください。
従来、脂質異常症は脂質が多いことだけが問題とされていましたが、近年、余分な脂質を回収する機能を持つ善玉HDLコレステロールが低いと、他の脂質が基準値内であっても動脈硬化を引き起こすことが分かってきました。悪玉のLDLコレステロールや中性脂肪が基準値を超えるか、あるいは善玉のHDLコレステロールが基準値を下回ると脂質異常症と診断されます。
脂質異常症が起こる要因
脂質異常症の主な原因は、過食、偏食、肥満、運動不足、喫煙、飲酒、ストレスなどとされていますが、他に遺伝的要素も関係しています。家族性高コレステロール血症の方は、治療必須と言っても過言ではなく、若年発症の心筋梗塞を来たすことがあります。また、女性は女性ホルモンの分泌が低下する閉経後に発症するリスクが高くなります。
内臓脂肪型肥満では脂質異常症を引き起こしやすく、メタボリック症候群と他の生活習慣病が重なると、それぞれの数値に大きな異常がなくても、動脈硬化の進行が促進されることが知られます。
脂質異常症と動脈硬化の関係
脂質異常症は、血管を硬くもろくする動脈硬化を進行させる疾患です。加えて、プラーク沈着による血管狭窄、プラーク剥離による血栓形成による血管閉塞のリスクを高める疾患でもあります。突然の心筋梗塞や脳卒中を予防するためには、脂質の状態を良好に保てるよう管理することが重要です。
脂質異常症による諸症状
脂質異常症は、自覚症状がないまま進行し、心筋梗塞や脳梗塞などの危険な発作が起こるまで気づかない場合があります。健康診断などで脂質の異常を指摘されたら、自覚症状がなくても、適切な治療を開始することが大切です。脂質管理だけでなく、動脈硬化の状態を定期的にチェックし、必要な治療につなげるようにしましょう。
脂質異常症の治療
脂質異常症は、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などの生命を脅かす疾患につながりやすい生活習慣病です。また、内臓脂肪型肥満による他の生活習慣病の合併がある場合には、動脈硬化へ進行するリスクが高くなります。特に、内臓脂肪型肥満に糖尿病や高血圧を合併したメタボリック症候群では、検査値に大きな異常がなくても動脈硬化が進行しやすいことが知られています。脂質異常症の進行には、食事、運動、喫煙、飲酒などの生活習慣も大きく影響します。したがって、他の疾患の有無やその状態、生活習慣を十分に把握することが、治療を適切に行うことへの基本となります。
肥満の場合はカロリー制限を行い、適正体重まで減量し、それを維持することが重要です。食事や飲酒をどの程度制限するかは、どの脂質に異常があるかによって多少異なります。適切な体重の維持や、軽い有酸素運動の習慣は、他の生活習慣病の発症や進行の予防にも大いに役立ちます。
高尿酸血症(痛風)とは
高尿酸血症(痛風)とは、血液中の尿酸が過剰な状態が継続する疾患です。尿酸は水に溶けにくく、血液中で鋭い針状の結晶を形成し、それが関節に蓄積して炎症を起こし、痛風発作と呼ばれる激しい痛みを引き起こします。腎臓でできた結石が狭い尿路の肺に詰まると尿路結石となり、背中や腰に激痛が走ります。また、尿酸値が高い状態が継続すると、腎臓病、心筋梗塞、脳卒中などのリスクが高まります。これらの理由から、痛風発作を起こしたことがなくても、健康診断で尿酸値の異常を指摘されたら、できるだけ早く受診し、適切な治療を受けることが大切です。
痛風発作について
血液中の尿酸過剰により針状の結晶が形成され、それが関節や体の他の部分に蓄積し、炎症を引き起こしている状態が痛風発作です。痛みは激しく、身動きできないほどになる場合があります。多くは足の指の付け根に起こりますが、足首、膝、手、その他の関節にも起こることがあります。
基本的に尿酸値が高いと痛風発作を繰り返しやすいのですが、尿酸値の急激な変化や激しい運動も痛風発作の引き金になります。尿酸値を下げる治療は急激に行うのではなく、時間をかけてゆっくりと行う必要があります。
高尿酸血症の原因
- 高血糖
- 肥満
- 痛風発作
- 外食が多い
- 飲酒量が多い
- 痛風または高尿酸血症の親族がいる
- 野菜を摂らない
- 水をあまり飲まない
- 血圧が高い(高血圧と診断されたことがある)
- 運動不足の傾向がある
など
尿酸の原因となるプリン体は、多くの食品に含まれます。特にレバーなどの内臓肉にはプリン体が多く含まれており、こうした食品の過剰摂取は高尿酸血症の発症リスクを高めます。ビール以外のアルコールも尿酸値を上昇させるため、アルコールの過剰摂取もリスクとなります。さらに、他の疾患によって代謝異常が起こり、尿酸過多になり高尿酸血症を引き起こす場合もあります。
高尿酸血症の診断基準と検査
尿酸値が高まると、痛風の発作などの症状が現れる可能性がありますが、一方で尿酸値がかなり高い場合でも痛風発作を経験しない患者様も多く見られます。痛風の発作がなくても、長期にわたり高い尿酸値が続くと、様々な疾患のリスクが生じる可能性があります。したがって、健康診断などで尿酸値が高いと指摘された場合は、早めに医師の診察を受けることが重要です。
診察では、血液検査で尿酸値が7.0mg/dL以上の場合に高尿酸血症と診断されます。ただし、痛風発作が起きている場合は正確な尿酸値が得られないため、痛みや炎症が収まり、状態が安定してから検査が行われます。
高尿酸血症には、尿酸を過剰に生成するタイプや尿酸を十分に排泄できないタイプ、そしてその両方に影響する混合型があります。尿を採取して尿酸の排泄量を評価し、症状に応じた適切な治療が行われます。
高尿酸血症の合併症
痛風発作に加え、高尿酸血症は尿酸結晶により多くの合併症を引き起こす可能性があります。高尿酸血症は、心筋梗塞や脳卒中、高血圧、脂質異常症、糖尿病などのリスクを高める動脈硬化も進行させます。
腎機能障害
腎臓は血液を濾過して尿を生成する臓器であり、その毛細血管が多いため、尿酸による損傷を受けやすい部位です。尿酸による損傷が蓄積すると、腎機能が次第に低下し、腎不全のリスクが生じます。腎不全になると、余分な水分や老廃物を十分に排出できず、透析や腎移植などの治療が必要となります。
尿路結石
尿の通り道である腎臓、尿管、膀胱などの尿路に、腎臓で生成された結石が詰まる疾患です。腎臓と膀胱をつなぐ尿管はもともとかなり細い上、さらに途中で細くなるため、結石が詰まると激痛が走ります。結石が小さければ、薬で痛みを和らげながら自然に排出できますが、大きい場合は手術が必要になります。
痛風結節
尿酸結晶が硬いしこり状の結節に変化している状態が、痛風結節です。これは体の様々な部位に発生します。特に脊髄に沈着すると、神経を圧迫し、麻痺などの深刻な症状が生じることがあります。
動脈硬化
高尿酸血状態の継続も他の生活習慣病と同様に、動脈硬化の進行を促進すると考えられます。また、高尿酸血症になりやすい生活習慣の多くは、他の生活習慣病にも共通しており、糖尿病、高血圧、脂質異常症などとの合併例も少なくありません。動脈硬化の進行を防ぐためには、適切な治療を継続することが不可欠です。
高尿酸血症の治療
生活習慣を改善し、体重を適切に保ち、食事やアルコールの摂取を制限し、十分な水分を摂取することが重要です。尿酸のもととなるプリン体を多く含む食品はできるだけ控え、カロリー制限も考慮します。尿が酸性になると結石ができやすくなるため、アルカリ性食品(海藻、野菜、豆類など)を積極的に摂るように心がけます。プリン体を多く含むビールや、その他アルコール全般は尿酸値を上昇させるので、飲酒は適量にとどめます。また、軽い有酸素運動を習慣にすることは大切ですが、筋トレや無酸素運動は尿酸値を上昇させる危険性があるため、これらを避けてください。
痛風発作の経験や尿酸値の高さなど、生活習慣の改善だけでは効果が限定的な場合は、薬物療法も検討されます。尿酸値が基準範囲内に下がったとしても、体内に尿酸結晶が存在する場合は、それらが溶けるまで治療を継続する必要があります。