横になると苦しいときに疑われる疾患
心不全
心臓の機能が低下し、全身に十分な血液を供給できなくなることで、体内の酸素供給が不足します。腎臓への血液供給が制限され、尿の生成が難しくなります。尿の生成が妨げられると、体内に余分な水分が蓄積され、それが原因で足がむくみます。このむくみは体内に水分が留まることによるもので、進行すると肺の周りにも水分がたまります。これが進行すると、呼吸が効果的でなくなり、横になると肺を取り囲む水分が増え、ますます呼吸が難しくなります。簡単に言えば、「横になるのがつらい」という症状は、心不全が進行した段階であり、注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に無呼吸やいびきを繰り返すことで、良質な睡眠が妨げられ、身体に様々な障害を引き起こす疾患です。新幹線の居眠り運転で話題になりました。睡眠中に舌がのどに落ち込み、空気の通り道がふさがれるため、酸素が体内に入りにくくなります。主な症状としては日中の眠気が代表的ですが、睡眠中に窒息感などの症状が出ることもあります。
気管支喘息/慢性閉塞性肺疾患
肺の気道(空気の通り道)が狭くなる疾患です。気管支喘息は自律神経に影響され、夜間、特に明け方に症状が現れやすいといわれます。慢性閉塞性肺疾患では、夜間に痰が排出されにくくなり、気管支にたまり、気道が狭くなって症状が出ます。
横になっても眠れないときの対処法
横になっても息苦しさで眠れない場合は、体勢を変えることで眠れるようになることがあります。仰向けで寝る場合と横向きで寝る場合について、以下にご説明しますのでご参照ください。
仰向けで寝る場合
仰向けで寝るときは、上半身を高くすると効果的です。また、膝の下にクッションなどを置き、膝を曲げる体勢だと寝やすくなります。また、電動ベッドを使って上半身を高くする方法も一案です。
横向きで寝る場合
横向きで寝ると、いびきが改善されることがあります。特に睡眠時無呼吸症候群の方は、仰向けで寝るよりも横向きで寝る方が舌の下がりを防ぎやすくなります。快適な姿勢を保つために、枕やクッションを抱えるなどの工夫してみてください。
横になると苦しいときは座るだけで良い?
座位では横隔膜が下がり、臥位では腹部臓器による横隔膜への圧迫が減るため、呼吸面積が広がり、肺の拡張が楽になります。その結果、胸郭が拡大し、横隔膜や側腹部の筋肉がより活発に動くようになります。
うっ血性心不全などの心臓性呼吸困難の場合、臥位では呼吸が困難になるため、上半身を起こしてテーブルなどにもたれて前傾する(起立位)か、後傾する(ファーラー位)ことで呼吸が楽になることがあります。この状態を起座呼吸といいます。
肺活量の向上に加えて、座位では下肢や腹部の静脈に血液が滞留し、心臓に戻る血液(静脈還流)が減少するため、肺うっ血が緩和され、呼吸が容易になります。